リニューアルでは検討漏れに御用心!事前にじっくり考えたい問い合わせの処理体制(3/3)
後工程の設計、超重要
このケースの場合、最大の問題は「フォームを設置するだけで、後工程の設計がなかった」ことに尽きます。
理想的なフォームであるなら、想定された問い合わせ以外来ることがなく、想定された頻度でしか来ないでしょう。しかし、フォームが理想的であったとしても、フォームに入力するのは現実のユーザーです。そんなに甘くありません。
フォームからくる問い合わせの大半は、営業提案か、他部署あてがふさわしい問い合わせです。フォームを受けるということは、この多大なノイズをかき分けるという想定外の作業をこなさなければならないのです。このため、メールを受けた本人に任せっきりで、本人だけが応答するような業務設計はそもそも間違っています。
まず、振り分けの処理を行ってから、処理すべき問い合わせを、処理すべき担当者に割り当てる必要があります。特に注意が必要なのは他部署がふさわしいと思われる問い合わせで、実はこの振り分けを行うには、社内のどの部署でどんなことをやっていて、相談先が誰である、という社内に関する知識を必要とします。
自部署だけで処理するのは困難、ましてや新人さんには無理でしょうから、社内に詳しい部署との連携が不可欠です。フォームを処理する際、エスカレーションフローを整備し、部署単独ではなく、社内全体で応対するような業務設計が必要なのです。
自部署が必要なのは新規顧客かもしれませんが、フォームで問い合わせをする方にとって、相手は会社そのものです。会社そのものがどう応対するかが問われています。
また、フォームからどれくらいの問い合わせが来るかは制御できません。何かのきっかけで大量に来ることもありえます。そのような場合でもきちんと対応できるような体制を整えておかなければなりません。
その意味で、フォームに問い合わせが何件来たかを計測するだけでなく、問い合わせに対して「最初の実質的応答」を出すまでどれくらいの時間がかかったかということを計測することが重要です。
この「最初の実質的応答」とは、受け付けましたメールのことではなく、受け付けて社内の担当者に転送し、その担当者が問い合わせ元に返事を送るまでにかかった時間のことです。これがあらかじめ想定した時間に収まっていることを確認することで、「フォームからの問い合わせが機能している」かどうかを判断できる、重要な指標となります。
ふさわしいツールを使いましょう
フォームから来た問い合わせをメールで受信することは比較的簡単ではありますが、メールの場合アカウントを閉じてしまうと、以前の状況を知る手段がなくなってしまいます。さらに宛先が一人だと、その担当者が休んだり辞めたりした場合に手詰まりになってしまいます。
どうしてもメールを使わなければならないのであれば、せめてアーカイブ機能がついたメーリングリストを使うべきですし、そもそもがメールだけではなく、すべての過去の応答を共有できるような「お問い合わせ管理ツール」を使うことが望ましいでしょう。
あとから参加したメンバーがすべての経緯を確認できる状態を維持しておけば、問い合わせが増えた時に応援を頼みやすいでしょう。
どういうツールを使って、ノイズの切り分けをどういう体制でやり、切り分けた結果をどう共有し、それぞれどこの誰に連絡するのか。連絡を受けた担当者は、どれくらいの期間で返事をしなければならないのか。これらの状況を個人情報を保護しつつ共有できるようにするにはどうやって運用するのか。
意外とこれ、事前にしっかり考えておかないと足元をすくわれます。
リニューアルで悪化しないために
問い合わせを増やそうとしてフォームを設置するのは良いのですが、フォームを処理する体制も同時に整備しておかないと、フォームを設置することで問い合わせのレスポンスを悪化させる、というなんだかわけがわからない結果になってしまいます。
そうならないように、リニューアルを計画する時点から、あらかじめどういう体制でフォームからの問い合わせを処理していくのか、管理ツールの導入も視野に入れて検討するようにしましょう。
それでもまだ、フォームだから応答に多少時間がかかっても許されるところがあり、担当者をやりくりする時間も取れるのです。これが電話応対やチャットだったりすると、時間的余裕はゼロですから、常に張り付いていなければなりません。よりシビアな体制づくりが求められるところです。
リニューアルの際は、こういったバックオフィスの体制も合わせて事前に設計しておくようにしましょう。Webページだけピカピカになっても、サービスレベルが落ちてしまっては元も子もありません。
もし、問い合わせフォームの見直しや、お問い合わせを受けとった後の運用体制づくりでお困りの場合は、お気軽にご相談ください。