【広報の視点】Webリニューアルすることになったら気をつけるべき6つのポイント(後編)
前編では、6つのポイントのうち組織の中で起きやすい問題と情報設計の視点を解説しました。
後編では、リニューアルするWebサイトをどのように活用していくのか?という観点から迫ってみます。
4.BCP(事業継続計画)とWebサイトの維持
事業継続計画の中でWebサイトをどのように位置づけ活用していくか、というのは重要なテーマになります。
現実的には大規模災害が起きた際、Webサイトが最後のコミュニケーション手段になる可能性もあります。
防災訓練と同様にサーバーやシステムと運営体制に冗長性をもたせ、シミュレーションを行う必要もあります。
Webサイトは災害時にも頼りになるコミュニケーション手段ですが、その一方で災害とは関係なくサイバー攻撃やシステムのトラブルでサイトがダウンしてしまうこともあります。
その予防・対策のためにどの程度の費用をかけておくべきか?というご質問をいただくことがあります。
セキュリティ対策については、上を見たらきりがないほど様々な手段があり、どの施策でこれぐらいの費用が妥当という考え方はできません。
(改ざんやフィッシング、情報漏えいといった企業のイメージダウンにつながるような被害についても考慮が必要です)
むしろ、サイトがダウンした際の損害についてダメージを想定し、それを回避するために保険的にかけられる費用を算出するアプローチをおすすめしています。
広報の視点からみると、実は広報業務そのものが事業継続計画として含まれるべき内容だったりします。
例えば災害発生時のさまざまなアナウンスメント、例えば会社の運営状況から地域社会への貢献(避難所としての活用 etc)までWebサイトが機能している限りはその役割の重要性は増すばかりなのです。
5.ベンダー各社と業務分担・業務区分
発注側としては制作会社(ベンダー)にすべて一括で委託しているという認識でありながら、制作会社側としては範囲外と解釈しているすれ違いが起きることがよくあります。
広報部門が担当している場合、特にシステム関連の分野で責任分界点が曖昧になりがちです。
サーバーは自社でホスティング契約し、FTP(SSH)アカウントを付与された制作会社が制作を担当するというのはよくある座組ですが、システムやアプリケーションの保守をどこにもお願いしてなかったというケースも有ります。
テクニカルなことに明るくない方のために以下に忘れがちな項目をリストアップしておきます。
サーバー・システム関連
- テスト環境やステージング環境(とても忘れがちです)
- システム環境の保守(OSや、Webサーバーアプリケーション、CMSなどのシステムのバージョンアップやセキュリティ対策)
- システム監視(稼働監視、攻撃をうけているかどうかの監視 etc)
- DNSの管理(社内の情報システム部管轄なのか、外部に委託なのか?)
- バックアップとその復元
契約や手続き
- ドメインの取得、更新、保全
- SSL証明書の取得、更新、登録情報に変更があった際の処置
- アプリケーションやプラグインのライセンス処理
- コンテンツや素材のライセンス処理
外部サービスの管理
- Google関連(Analytics、サイト内検索、タグマネージャー、Search Console etc.)
- SNSやYoutube関連(アカウントの管理、プラグイン等の管理)
- 広告効果測定関連
もちろんすべてを広報部門で担当する必要もなく、それぞれに業務区分と制作会社の組み合わせをきちんとアサインすることが重要です。
6.運用体制と計画
Webサイトはリニューアルして公開してからが本当の始まりです。
新しいサイトのデザインを検討したり、業務効率が向上するシステムの検討はワクワクすることもありますが、それらをうまく活用していくのがリニューアルの本来の目的のはずです。
そのためには、体制と運用計画がセットで検討される必要があります。
体制に関して言えば、リニューアルプロジェクトのメンバーを継続的にアサインできればよいのですが、各部の兼任スタッフが一時的に駆りだされているような状況だとそれは難しいケースがほとんどです。
持続可能な体制づくりのポイントは、”目的別の分科会“です。
Webサイトを活用する目的が日常の業務の目的と合っているメンバーで分科会を組織すると、うまく機能していきます。
こちらの記事も参考にしてみてください。
そして、運営計画についてはちょっとしたコツがあります。
「事業計画や営業計画に沿ったWeb施策」を考えるのが王道ではありますが、Webサイトに訪れるユーザーはコンテンツに引き寄せられてくるものなので、コンテンツの「ネタ」を中心に計画を考えてみる方法があります。
雑誌やメディアサイトの運営でも活用されている「コンテンツカレンダー」や「エディトリアルカレンダー」という手法がおすすめです。
こちらの記事で、コーポレートサイトで活用するためのヒントと一緒にカレンダーのフォーマットがダウンロードできます。
昨今では、広報部門がコーポレートサイトを管轄することが一般的になってきましたが、業務の範囲や知識の範囲として幅広くなってしまうため、問題が起きるまで課題として認識されていなかったという構造のエラーが起きやすい面もあります。
6つのポイントで全てというわけではありませんが、これらの視点をもって取り組んでいけばリニューアルプロジェクトを成功に近づけることができると思います。