「コミュニケーション力」に対する誤解
プロジェクトを成功に導くためには「コミュニケーション力」のある人をプロジェクトマネージャーにすればよいかというと、半分は正解ですが、実はもう半分のほうが重要かもしれません。それは「伝わったかを確認する能力」です。
組織が大きくなればなるほど、決裁権をもつ人物とプロジェクトにアサインされるメンバーの距離が離れていきます。メンバーは検討事項を持ち帰って説明し、ひとつずつ合意を積み重ねていく必要があります。
そのためプロジェクトマネージャーには、難しい内容をわかりやすく説明する能力以外に、説明を受けるメンバーやその先の関係者の中に生まれることがある「なんといったらいいかわからない違和感」を察知して、言語化していく力も重要なのです。
このようにプロジェクトマネージャーの「コミュニケーション力」では、メンバーを通じて関係者や決裁者に正しく「伝わった状態」を確保する力が求められるのです。
「論理的に話す」とか「わかりやすい説明ができる」といった側面だけの「コミュニケーション力」だけでは通用しない世界なのです。
メンバーの置かれる「立場」
もうひとつ忘れてはならないのが、プロジェクトにアサインされているメンバーの「立場」です。
企業サイトリニューアルのプロジェクトの場合、メンバーは「兼務」であることが普通です。プロジェクトリーダーですら兼務であることも珍しくありません。
この場合、メンバーが持ち帰る「タスク」や「検討課題」は、その人の中で必ずしも優先度が高いとは限らないということです。
メンバーの多くはプロジェクトマネージャーからの指示とは別の指示が上司から降ってくる状態にあるのです。メインの業務で緊急性の高いタスクが発生すれば、そちらを優先してしまうことも多いでしょう。
その上、職場の他の人たちにとってもイレギュラーな内容のタスクになるため、協力の仕方もわからず、助けようにも助けられないことも珍しくありません。
持ち帰ったタスクが職場内で検討したり分担して作業を進めなくてはならない場合、そのお願いをするコミュニケーションはメンバーにとって少なくない負担になっているのです。