BtoB企業のコーポレートサイトをブランディング視点で考えてみる(2/2)
意匠より実像を伝えるブランディング
BtoBのビジネスにおいてもWebによる情報収集が一般化した現在、取引先企業の情報や導入を検討している製品・サービスなどの下調べのために、かつては電話や直接足を運んで集めていた資料の大半はWeb上で知ることができます。
特に初めての取引先の場合、Webサイトでの「体験」はそのままその企業の第一印象となります。
それはかつて、最初に会った担当者に企業イメージを垣間見ていたのと同じことです。
だからこそ、コーポレートサイトでも企業文化や哲学を印象付けるためのブランディングが重要となってくるのです。
ここではロゴやコピーといったクリエイティブを美しく整えることはもちろん必要ですが、そういった象徴的な「意匠」よりも体験に基づく「実像」の方がユーザーにとってより印象深く残る、ということが重要なポイントとなります。
コーポレートサイトを訪れるユーザーの目的、それは何かしら有益な情報や資料を持ち帰ることです。
ユーザーがどのような情報を探しているか、についてはコツコツとコンテンツを提供し続けるほかありません。
しかしながら、たとえ情報が見つからなかったとしても、サイトの使い勝手や表現を通じて「良い体験」を与えておくことはビジネスを展開する上でも重要です。
設計が拙く情報が探しにくかったりするとユーザーはストレスを感じることとなります。
また、リード獲得の目的で設置している資料ダウンロード用のメールフォームやアンケートフォームなどは情報設計だけでなく、送信完了画面やサンキューメールの文面でその印象を左右します。
リンク切れや誤字脱字をできる限りなくすといった努力は「営業パーソンが身だしなみを整える」といった行為に近いかもしれません。
瑣末なことに思えるかもしれませんが、一つ一つの小さな体験が無意識的に印象として形作られます。
競合他社のサイトを訪れた後、「さっき見た企業の方がサイトは良かったよね」といったポジティブな印象を与えることができれば、比較検討の上でもプラス材料となるはずです。
コーポレートサイトの先に「人物」を見る
リニューアルやブランドコンテンツなど、Webサイトの見た目や体裁を整えることで一時的に好印象を与えることは可能でしょう。
しかしながらブランディングは継続的に形成されるものであり、一度ブランドに綻びが出てしまうと、その崩壊もたやすいものです。
特にBtoBの場合、Webサイトだけでビジネスを完結することはほぼ不可能で、ファーストコンタクトの次には必ず人物とリアルにコミュニケーションするフェーズを迎えます。
せっかく美しくレイアウトされ豊富なコンテンツがあり、企業文化や哲学が「立派に」語られているサイトがあったとしても、実際にコミュニケーションした人物とそのサイトの印象が著しく異なるようでは、せっかくファーストコンタクト=コーポレートサイトで与えていた好印象も台無しです。
そうした体面を繕うだけの施策を「ブランディング」と呼ぶことはできません。
加えて、コーポレートサイトの印象の先に人物像を見るという観点から、従業員に対するインナーブランディングにつながる側面もあります。
というもの、その有り様が「企業のユーザーに対する態度や姿勢の表れ」とするならば、その背景にいる従業員も同じようにコーポレートサイトに体現されている企業文化や哲学を共有し、同じような態度や姿勢で臨む必要があるからです。
取引が長期にわたり、また金額面でのインパクトも大きいBtoBビジネスにおいて、企業文化や哲学が社内で正しく共有されているという一貫性は取引先の業者選択プロセスにおいて大きな役割を果たすことでしょう。
Webサイトも従業員も変わらぬ共通したコミュニケーション、一貫した企業文化・ポリシーがあると印象づけることが、BtoB企業におけるブランディング=無形の価値創造につながるのではないでしょうか。