「60分で読めるけれど 一生あなたを 離さない本」
という帯が、ずいぶん黄ばんだ一冊が手元にあります。
作者は、アメリカの広告会社で活躍された重鎮です。
原著の初版から半世紀以上にわたって支持されている歴史的な名著です。
本書のレビューについては各所で目にすることができるので、ここではWeb担当者としてどんな風に役にたつか?という視点でご紹介します。
本書の内容を、ものすごく大雑把に3つの要点にまとめると、
- アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせである
- アイデアは、以下の5つの段階を経て生まれる
- 【第一段階】: 資料を集める段階
- 【第二段階】: 資料を咀嚼する段階
- 【第三段階】: 考えを熟成させる段階
- 【第四段階】: アイデアが誕生する段階
- 【第五段階】: アイデアを世に出す段階
- アイデアの作製は、フォード車の製造と同じように一定の明確な過程である
ということです。
これに納得するには、是非この薄い本(目次の扉から数えても62ページしかない)を読んでみるとよいでしょう。
さて、これがどんなふうにWebマスターの仕事に活かせるのでしょう?
もちろん、いいアイデアを手に入れるために使うわけですが、おすすめなのは
「アイデアを生み出す仕事を、この段階に則して、チームで進める」
ということです。
チームが無い、担当者は一人だ。上司もいるが、「自分で考えろ」と言われるにきまってる。
そんな場合も心配はありません。制作会社に相談すればよいのです。
ただ、「アイデアを出してください」とオーダーして待っているだけでは、結局あまりいいものは上がってきません。
すべての段階を「丸投げ」してしまうと、第一の段階で躓いてしまいます。
制作会社は、御社の事情をよくわかっていない可能性が高いからです。
たとえば新商品のキャンペーンの企画立案が必要なシーンでいえば、
・要件をまとめる
・関連する資料を自分で集める
という準備をして、制作会社を呼んでオリエンを実施、ブレストをして持ち帰ってもらう。
そして、提案を待つ。
という流れが一般的かと思います。
これを、
・要件をまとめたらまずはオリエンを実施
そして、
・どんな情報を集めればよいか、議論して分担する
この分担では企業のWebマスター側は、外部からは調べる方法が無い情報を中心に集めるのがポイントです。
ブレストはそれぞれが情報を持ち寄って、咀嚼する段階として行います。
そのあとの、「考えを熟成させ」「アイデアが生まれる」段階は、制作会社に任せておいてもよいでしょう。
打合せの手間が増えてしまうかもしれませんが、これまでの経験上、こうすることで出来あがってくるアイデアのレベルが違ってきます。
なぜなら、インプットの内容が違うからです。
要点の1.にあるように、アイデアは既存の要素の結びつきである以上、インプットによって結果は左右されてしまうのです。
情報収集の分担を行わないと、既存の要素の結びつきにも限界があり「ありがちな」ものしか出てこなくなってしまいます。
検索エンジンの発展によって、Webを通じていろんな情報が手軽に手に入るようになってきましたが、Googleがリーチ出来ない情報の中に素晴らしい化学反応を起こす成分が含まれていることがよくあるのです。
著者の生きた時代にはGoogleは存在しなかったわけですから、この情報収集の段階って物理的にも大変な作業だったと思われます。
いまでもいいアイデアを生み出す秘訣は、その大変な作業の中に潜んでいるのかもしれません。
ちなみに、
ジェームス.W.ヤングのミドルネームの「W」は、「ウェブ」です。(James Webb Young) 奇遇ですね。