企業のWebサイト運営にも必要な「捨てる技術」とは?
Webサーバーがゴミの山!?
冒頭からスミマセン。
しかし現実には、不要なコンテンツが公開サーバーに大量に残されたままのWebサイトが多数存在しています。
- 終了したキャンペーン・プロモーションサイト
- 販売終了した商品やサービス紹介コンテンツ
- リニューアル前(古いデザイン)のまま残されているニュースリリースなどのコンテンツ
- 担当者の異動や部署再編の際に引き継ぎが行われておらず、誰が何のために作ったかよくわからない(でも削除して良いかどうか判断がつかない)コンテンツ
加えてバックアップやテスト・プレビュー目的で別名で保存したコンテンツもあるかもしれません。
※拡張子の前に「test」「bak」など名称がついているURLは、そう考えてほぼ間違いないでしょう。
これら不要なコンテンツは本来は適宜削除する必要があります。
しかし捨てる技術やノウハウについては情報もなく検討の機会もありません。
たまにはWebサイトでも「捨てる」を考えて見ませんか?
「公開終了でもアクセスできてしまう状態」そのものが問題
「他のコンテンツからのリンクはないからアクセスされる心配もないし、万一アクセスされても大きな問題にはならないでしょう?」
いえいえ、その油断が大きなリスクを産むことになります。
まず、こうしたコンテンツには古い情報や間違った情報が掲載されている可能性があります。
ユーザーに見られるだけでも十分恥ずかしいことですが、その誤った情報を信じてユーザーが行動しないとは限りません。
その行動がきっかけでユーザーとの間にトラブルが起きることもあります。
加えて、不要なファイルがあるということはサーバやリスク管理に対して不用意・無頓着であるとの印象を与えます。
ハッカーなど悪意のある攻撃者の目に触れてしまった場合、大きなセキュリティインシデントに繋がりかねません。
不要なコンテンツを生み出す歴史的背景とは?
ところでこうした不要なWebコンテンツ、いったいどうして発生してしまうのでしょう?
歴史的な背景から紐解いてみると、公開環境が1つしかない状態で長らくWebサイトの運用を続けていたことと関わっているように思えます。
今でこそ公開/テスト/プレビュー/バックアップといった目的に応じてWebサーバの環境を複数構成にすることも普及してきましたが、クラウドサーバが普及する前はよほどアクセスが大きなサイトでない限り、公開環境のみで運用しているサイトの方が一般的でした。
唯一正しく表示・閲覧できる公開サーバで表示テストからバックアップまで何でもかんでも行なっていた、という経緯があります。
不要なコンテンツをそもそも「公開しない」
こうした背景を踏まえると「捨てる」を考えた時にまず必要なのは、公開サーバ上でテストやバックアップなどの作業をしないという当たり前のルールを徹底させることです。
公開サーバ上で不要なコンテンツを生成することがなくなればそもそも「捨てる」必要もなくなります。
キャンペーンやプロモーション期間の終了、あるいは製品やサービス紹介コンテンツなどの販売停止に伴う公開終了については手順・ルールを定めておくと良いでしょう。
加えて、ユーザーの目に触れるところ公開サーバには完成品だけをおいておき、テスト・プレビューやバックアップはユーザーの目に触れない環境で行う、という複数台によるサーバ構成で運用する環境を整えることが求められます。
店舗であれば店頭とバックヤード、オフィスであれば会議室などの共有エリアと入退室などの規制が発生するエリア(いわゆる社内)とをそれぞれ分けるのと同様のイメージです。
リニューアルプロジェクトを機に「孤立化」するコンテンツ
リニューアルプロジェクトのタイミングで古いコンテンツや不要なコンテンツを大量に処分することもよくありますが、この際にきちんと処置をしないと、オーナー不在の「誰が何のために作ったかよくわからない(でも削除して良いかどうか判断がつかない)」コンテンツが生まれてしまうことがあります。
その多くはリニューアルの対象から外れたけど「何かしらの理由」でそのまま残しておいたコンテンツ。
リニューアル対象外ということでプロジェクト資料に含まれないため正しく引き継ぎもされず、そのうち当時の担当者も辞めてしまって、いつしか誰も触れることができない孤立化したコンテンツとなってしまうのです。
「捨てる技術」について、実際の片付けや整理に関するノウハウ本や指南書を見ると
「高いお金を出して買ったのに…」
「いつか使うかもしれないから…」
といったいわばもったいない感情が捨てることの妨げとなっている、という指摘をよく見かけます。
企業でもWebサイトやコンテンツの管理や所在が特定の個人に紐づいている環境では、こうした理由から「捨てられない」状態になってしまうことも十分起こり得るでしょう。
しかしWebサーバを複数所有することへのハードルが下がった現在、より合理的にコンテンツも管理することができるようになっています。
組織の論理よりユーザー視点で
「当時の〇〇部長肝いりの企画で…」
「社長が(もう忘れてるかもしれないけど)直々の依頼で…」
組織の論理としてはよくあるケースですが、ユーザーの視点から見ると疑問符が浮かび上がります。
例えばトップページの下の方のポツンとバナーが掲載されているだけで、サイト全体の構成からまったく切り離されてしまった古いコンテンツ。
恐る恐るクリックして見ると一通りコンテンツは閲覧できるものの、情報も古く文字サイズも小さくて見づらい(もちろんスマホ未対応)。
挙句の果てにはフッターのリンクが古いままでメンテナンスされていないため、元のサイトに戻ろうと「会社情報」リンクをクリックするとエラー画面が表示される…
ユーザーの印象は推して知るべし、ですね。