UXの事件は現場で起きている〜令和元年のかき揚げ事件〜(2/3)
「かき揚げ事件」の原因とメカニズム
なぜ「うどん・そば」の文字が無いか?
食べログの過去の写真を追跡すると2019年10月9日登録の写真までは「うどん・そば」の文字がボタンのラベルに印字されているが、同年10月24日登録の写真ではそれがなくなっています。
これは、どちらも料金は同じであり食券を購入する段階で決定する必要はなく、食券の提出時に「うどんですか?そばですか?」の問いを受け回答するシステムなので、ボタンのラベルとして必須ではないと判断したと思われます。
しかし「かき揚げをトッピングしたい」と思っているユーザーに誤解を与えるトラップとして機能した可能性は拭えません。一応、「かき揚げ」の文字の下に「温」「冷」の文字があるためヒントにはなるが、ちょっと難しいと思われます。
なぜ「トッピングのかき揚げとごぼう天」が同じボタンか?
「同じ値段なので」という理由が想像されますが、それだけではなさそうです。
このお店には券売機が2台あり、片方は交通系ICカードに対応した読み取りユニットがあります。そのため、ボタンのレイアウトスペースとして9個分のスペースが潰されています。
隣の券売機はICカード読み取りユニットはないが、ボタンの位置を合わせるために9個のボタンは潰してある状態。
繰り返し訪れるユーザーはどちらの券売機も使う可能性があるため、ボタンの位置は合わせておくべきですが、それによってラベルの視認性が悪くなっているという状況でした。
なぜ「トッピングで千円超え」に違和感を感じなかったのか?
現場検証を行った2019年12月現在、白だし豚しゃぶそば大盛りとかき揚げそば大盛りは千円を超える組み合わせでした。それが、「白だし豚しゃぶそば大盛りにかき揚げトッピング」の値段として違和感を感じる金額だったかどうか?
これは、個人的な経験や生い立ちにもよるところがあり、一般化はできない問題です。
少なくとも我々のフロントエンジニアは「白だし豚しゃぶそば大盛りにかき揚げトッピング」で千円を超えても違和感は感じない感覚の持ち主だったのでしょう。
券売機の「沼」
券売機のタイプは主に「ボタンタイプ」と「タッチパネルタイプ」に分かれます。
ボタンタイプの券売機は「メニューを選択する」という操作プロセスにおいて、ボタン操作と発券が「1:1対応」しているため比較的わかりやすいものです。隠されたボタンでもない限り、選択肢は全て見えている状態です。
しかしタッチパネルタイプの券売機の場合は、階層化されたメニューで選ぶ場合が多く「メニュー選択」の操作は複雑になりがちです。
券売機業界の情報を検索してみると、タッチパネルタイプの方が様々なメリットがあるようです。季節のメニューへの対応が簡単であったり、多くのメニューを収容できたり。
しかし、ユーザー側からしてみると、上位カテゴリのグループの中に探しているものが含まれているかも知れないことを想定しなければならず、実際にはトライアンドエラーを繰り返しながら選んでいくことになります。
ランチタイムなど列ができるような状況だと背後からのプレッシャーもあり、階層構造が複雑なメニューはユーザーのストレスを高めてしまいます。
そういうわけで、結構なメニューの量がありながらも立ち食いそば店ではボタンタイプが今でも主流です。