セールスしないWebサイト、顧客を作るWebサイト(後編)
前編では主に、ユーザーが必要としているのはセールス的表現ではないということを書きました。
後編では、セールス・宣伝をしなくても、顧客を作ることができるための仕掛けを説明します。
扱う情報が増えるから設計が必要
すべてのユーザーのニーズを予測的に網羅しておくことは不可能ですが、コンテンツ・情報の設計を行うことでユーザーのニーズを体系的に予測することは可能です。
自社のサービスや商品がユーザーにどのように求められ、受け入れられているか分類整理して構造化したコンテンツを用意することで、さまざまな検討段階にあるユーザーや、幅広い利用シーンに対応することができるようになります。
紙のカタログやリーフレットを想像すると情報の重複や切り口を変えた表現は冗長に感じることもありますが、Webのコミュニケーションにおいては細かな文脈の違いに対応したそれぞれの切り口が有効になることがあります。
そして、Webならではの方法として、情報をデータベースに格納して、ユーザーのニーズ(探したい文脈)に合わせて動的に(ダイナミックに、プログラムを通じて)ページを生成することも可能です。
その機能をユーザーがどうやって使っているかを分析すれば、隠れたニーズ・潜在的な要望を予測することに役立ったりします。
さらに、特定のユーザー(たとえば、見込み客)と継続的にコンタクトできるような接点を作りたいのであれば、コンバージョンのための機能を丁寧に設計することをお勧めします。
ユーザーが求めるアクションのための機能
BtoCのビジネスの場合、メーカーやベンダーのサイトを訪れるユーザーのニーズは、
- 商品の詳細情報(スペックや寸法などの仕様)
- 商品に関するサポート情報
などの情報を取得することを主な目的としており、その場合は情報を取得した段階でゴールするため、そのユーザーを見込み客に転換することはできません。
継続的なコンタクトを可能にするためには、
- 続きが読みたくなる継続性のあるコンテンツ
- 再度利用する価値があると感じられるコンテンツ
- インセンティブにつながるコンテンツ
などを利用して、SNSページのファン化・フォロワーになるよう誘導したり、再訪を促す施策(メルマガ会員、RSS登録 etc.)へ導くことで関係性を構築することができるようになります。
BtoBのビジネスの場合は、
- 社内で上司に説明するための資料が欲しい
- 価格に関する情報を知りたい
- 営業から説明して欲しい
- 条件交渉したい
- 見積りが欲しい
- デモンストレーションを見たい
など、商談の発生・進展につながるニーズと、
- 候補として残しておきたい
- (導入はしないかもしれないけど)有益な情報源として覚えておきたい
- 関係者に情報を共有したい
といった、見込み顧客予備群のニーズがあります。
これらのユーザーの要求に応えるナビゲーションとコンタクトフォームかキチンと機能していれば、顧客を作るWebコミュニケーションを実現できます。
ユーザー行動シナリオを営業フローに組み込む形で想定する
BtoCのビジネスで、ECサイトへの導線と決済・流通が確立できているあるいはオフラインの流通への誘導がゴールの場合は、上記の機能が使われた時点で一つのシーケンスが終わります。
しかしBtoBの場合は、そのあとにつながる営業・商談プロセスがあるので、その業務フローにマッチする形でサイトのコンテンツと機能を設計していく必要があります。
そのために、まずは営業部門の方とよく話し合って、典型的な営業フローの例や、新規のお客様との取引が始まるまでのステップなどを一連のモデルとして分析することをお勧めします。
会社によっては、名刺管理のシステムやSFA、CRMのシステムを導入していることもあるため、それらの活用とWebコミュニケーションを連動させていく設計が重要になります。
そして、そこでも中心に据えるのはシステムやWebではなく、あくまで「ユーザー」を起点に考えなくてはなりません。
ユーザー行動シナリオを考えるにあたっては、BtoBの場合はユーザーのパーソナリティとしてのペルソナを想定するよりも、ステータス別の段階分けのほうが有効です。
- 具体的な検討段階に入っている顧客(商談中)
- 比較検討段階でリーチできている顧客
- 情報収集段階でリード獲得の対象
- 課題が顕在化していなくて、気付きが必要な段階
これに対し、たとえば
- 営業からの直接コンタクト+限定コンテンツの案内
- メルマガ、営業メールで「USP」「差別化ポイント」「限定インセンティブ」などを紹介するコンテンツへの誘導
- キーワード、バナー、メルマガなどの広告+LPと資料ダウンロード機能
という施策を組み合わせることで、Webサイトにおけるコミュニケーションを営業フローに組み込むことができるようになるのです。
理屈で説明すれば、割とシンプルなのですが営業の部門を巻き込んでいくあたりが大変かもしれません。
もし、社内のWebに対する認識が「会社のホームページ」という状態だとしたら、それを「会社のWebサイトはお客様が使うもの」という視点に考え方を切り替えてもらえるように働きかけることがコツかもしれません。