【広報の視点】Webリニューアルすることになったら気をつけるべき6つのポイント(前編)
企業のWebサイトリニューアルプロジェクトを、広報部門が担当することはよくあるケースかと思います。
プレスリリースの更新など日常的にWebサイトの運営に携わっていることもあり、周囲や経営層からも「Webのことをよく知っている」と思われているかもしれません。
しかしながら、いざリニューアルプロジェクトとなると、日常の運営とは勝手の違う問題が発生します。
現状のコーポレートサイトに対してはいろいろな立場の方が問題を見つけていたり、それぞれの視座で思いつく要望・アイデアを持っていたりします。
特にそれなりの規模の企業の場合、組織によって意識やリテラシーには往々にしてバラつきがあるものです。
部門間の利害の食い違いや、Webサイトの恩恵を享受している部署とそうではない部署の差。あるいは活用する価値があるのに関心を払っていなかったり…
今回の記事では、Webサイトのリニューアルプロジェクトにおけるよくある問題や落とし穴とその解決・回避策につながる6つのポイントを前後半にわたってご紹介します。
1.組織間のリテラシーギャップは「必ずある」
トップダウンで決めるから多少のギャップは無視してすすめる、という方針もたまにありますが、経営層と現場レベルではWebサイトに対する理解度に大きな差があり、最終的には現場レベルのニーズへの対応が必要になることもあります。
「ギャップがない」「全社一致している」ということはまずありえませんので、十分なコミュニケーションをとってそれを埋めていく心構えが必要です。
社内の会議の場ではギャップを常に意識しておく必要がありますし、プロジェクトに関わるメンバー全員にそれを周知し、問題を共有しておくことが重要です。
たとえば社内セミナーなどを開催したり、プロジェクトの進捗を報告する報告会を開催することでコミュニケーションも有効です。
結果としてプロジェクト運営の効率化にもつながります。
以下、施策例です。
プロジェクトキックオフミーティング
プロジェクトメンバー間での目的・目標の共有、プロジェクト計画のアウトラインを策定
プロジェクト計画レビュー会
プロジェクトメンバーの上長や経営層と広報部門の責任者に対する、リニューアルプロジェクト計画の説明
プロジェクト中間報告会
計画レビューと同じメンバーへ向けた、進捗状況と問題点や課題の共有
リリース後のフォローミーティング
新しいWebサイトの利用価値やガバナンスルールの共有のためのミーティング
2.対立する情報システムと営業・マーケティング
特に利害やリテラシーの面で対立するのが営業・マーケティング部門と情報システム部門です。
広報担当ならずとも、その間で板挟みになって苦労された経験のあるWeb担当者の方はいらっしゃるのではないでしょうか。
よくあるのは、営業やマーケティングのやりたいことと、その実現のための技術的障壁やコストの対立構造です。
具体的には以下の様なズレを含んでいて、対立の根本はコミュニケーションのレベルで解決することもしばしばあります。
営業やマーケティングとしては
業績目標達成のために、あらゆる手を尽くさねばならなくて、競争に負けるわけには行かず検討した中では一番費用対効果の高い施策を実施したい。ダメなら最悪外注でもいいんだ。
情報システムとしては
施策の目的やその価値は十分にわかるけど、実行のためには事前に調べたり検証しなければならないことが山ほどあって、それを説明しようとしているのにすぐに結論を求められるから、「できない」「調べないとわかなない」しか言えない。
調整のポイントとして、必要に応じて情報システム部のリソースを管理する立場の方に相談して、検証や検討業務の優先度をあげてもらうよう働きかけるのがよいでしょう。
一方、マーケティング施策の場合はそのタイミングも重要となるため、営業・マーケティング部門には交渉をする前に時間的な制約条件を忘れずに確認しておくこともポイントの一つです。
3.作り手目線のコンテンツ・表現・情報設計
コンテンツ作りや情報設計の上で陥りやすい罠は、「作り手目線」となってしまうことです。
社内組織や開発経緯をシリーズ化したものがWebサイト上のカテゴリ分類としてそのまま反映されていたり、技術的・機能的な説明に終始しているサービス・製品紹介ページは多々見受けられます。
しかしお客さまにとっては企業の組織や過去の製品構成や情報そのものはあまり意味がなく、”自分(自社)にとってどんな価値や効用があるか?”という点が唯一にして最大の関心事だったりします。
そういった顧客側の視点については営業が一番知見をもっているはずです。
営業経験が豊富な方をプロジェクトメンバーに加えるのが最善策ですが、成績が優秀だったり新規顧客を掴んでくる現役バリバリの営業の方は本業が忙しく、リニューアルプロジェクトのメンバーに加えることは難しいかもしれません。
せめて、サイト構成やサービス・製品紹介ページの分類軸を確定する前に、お客さまの視点を理解している方にレビューしてもらうことをおすすめします。
広報部門としては、自社・お客さま以外のパブリックな視点(=客観性)をもって、表現・情報設計を確認してみるとよいでしょう。
実はこの「パブリックな視点」こそ広報部門ならではの情報資産であり、リニューアルプロジェクトへ活かすことでWebサイトもさらなる価値をもたらすのです。