Webサイトのリニューアルプロジェクトを「QCD」の視点から捉えてみる
「クオリティ(Q)」「予算(C)」「納期(D)」。
製造業における生産管理で重要とされる3要素「QCD」ですが、生産管理以外でのプロジェクトでも同様に当てはまります。
Webリニューアルのプロジェクトでは「クオリティ」を「内容」、「納期」を「スケジュール」に置き換えるとわかりやすいと思います。
- 内容(=Q:クオリティ)
- 予算(=C:予算)
- スケジュール(=D:納期)
この3要素はそれぞれ影響を受けあいます。
3要素の調和が取れている限りプロジェクトはスムーズに進みますが、リニューアルのようなプロジェクトではこの調和が崩れる局面が度々訪れます。
こうした構造を理解しておくことは、プロジェクトマネージメントを円滑に進める上でも重要です。
3要素の関係はトレードオフ
「QCD」の関係はトレードオフであることはよく知られているところですが、Webリニューアルプロジェクトでも先に挙げた3要素の関係がトレードオフであることに変わりはありません。
プロモーションサイト構築のプロジェクトを例にこの関係性を捉えてみます。
このプロジェクトは商品のリリース日が決まっており、公開スケジュールは遵守する必要があります。
ところでプロジェクトが進む過程で仕様や機能の追加や変更といった事態が発生したとします。
3要素のうち「内容」が変容するということです。
このケースではスケジュールを守ることが最優先となり、調整することができませんので選択肢としては下記いずれかの対応となります。
A:リソース(コスト)を調整して内容を変更する
B:内容を変更しない(もしくは後回しにする)
「内容を変更する」ことのトレードオフとしてコスト増を受け入れるか否かの選択を迫られる、ということですね。
当たり前のように思われるかもしれませんが、プロジェクトの過程でこの構造が見逃されてしまうことが案外多いものです。
優先すべきは「内容」
「Q→C→D」の並びは優先すべき要素の順となっています。
最優先すべきはクオリティという考え方です。
製品は何よりその出来栄え(=クオリティ)が直接的に売上、ひいては企業の評価や信頼へとつながります。
消費者向けの製品であればなおのこと、SNSや口コミを通じてあっという間に評判は広まるご時世です。たとえ価格が売りであっても「安かろう悪かろう」ではその評価は推して知るべしです。
Webサイトでも同様に「内容」を最優先させることが理想です。
ECを除けば直接的に売上に寄与することはありませんが、例えばコーポレートサイトはさまざまなステークホルダーとのコミュニケーションチャネルとして企業価値を生み出し、高める役割を担っています。
内容の優先順位を下げることで本来生み出されるべきこうした価値を削り取ってしまうのです。
計画段階で「予算」と「スケジュール」に幅をもたせる
そうはいってもスケジュールと予算が最優先になってしまうのがWebリニューアルのプロジェクトにおける現実です。
特に有限の資産である「予算」は組織で厳しく管理される対象でもあり、追加や変更の際はそれ相応の理由や手続きが必要となります。
面倒な事態を避けたい担当者の気持ちは十分に理解できます。
かたやスケジュールや予算のような数値指標がない「内容」は変動する可能性が高い要素となります。
プロジェクト開始時、概算の予算やスケジュールと一緒に提示された企画や計画通りの内容で完成することはまずありません。
なので、プロジェクトを計画する段階で「予算」と「スケジュール」にあらかじめ変動幅を設け、変動要因に対するリスクヘッジを行っておくことをオススメしています。
変動の幅は状況によって異なりますが、概ね2割を見込んでおけばよいでしょう。
もう一つのポイントとしては段階的にプロジェクトを進める、あるいは見直しフェーズを設けるということです。
住宅建築では着工・上棟・竣工といった支払いのタイミングがあり、最後(竣工時)に余剰分を精算する商習慣があります。
Webサイトのプロジェクトで支払いのタイミングを複数回設けるのは難しいかもしれませんが、企画・設計・実装といったそれぞれのフェーズで3要素を見直す機会を設けておくことで、そのブレ具合を認識しておくことはできるはずです。
もちろん、企画段階でできる限り精度の高い計画を立てることがプロジェクト成功への近道ではありますが、こうしたリスクヘッジもプロジェクトマネージメントのひとつの側面なのです。