優れた「戦略」と「戦術」の例
10年以上前の書籍ですが、「戦略シナリオ」というキーワードで調べると、たどりつく優れた例があります。
「まずは飲食コンテンツに集中する。半径2kmのコア商圏でNTTデータの飲食件数のうち15%を獲得すれば、読者のマインドシェアを獲得できて、流通段階でみんなが自ら喜んで手にとって持ち帰るインフラができる。その流通インフラが確立できれば、一気に効果のある媒体になれる。その後に美容室、キレイ、スクール、リラクゼーション、ショッピングなどのコンテンツに展開を拡大する。そして、街の生活情報誌になる。そのために、半径2kmにある街の飲食コア商圏内の飲食店へ、特に居酒屋へ営業に行く。1/9スペースを3回連続で受注する。
1人1日20件の訪問を実行する」
これが『ホットペッパー』の勝つシナリオだった。”出典元:『Hot Pepperミラクル・ストーリー』|東洋経済新報社
この一文だけで、シナリオとして「戦略」が理解できるのです。
成分をよくみてみると、
「〜そして、街の生活情報誌になる。」
の部分までが「戦略」であり、以降の、
「〜1人1日20件の訪問を実行する」
は「戦術」についての内容と言えます。
目的が明確で、過去の事業経験から導き出される数値的根拠があり、進め方の段取りがわかる。
その上で、この事業に携わる一人一人がどんな行動をすればよいのか、具体的に実行可能な表現で書かれているのです。
使えるWeb戦略策定のステップ
それでは、このように「戦略」と「戦術」が連続性を持ちつつ、「戦術」の選択に役立つような「使えるWeb戦略」を策定するにはどうしたらよいでしょう?
STEP1:目的のカテゴリを分ける
Webサイト、Webを使ったコミュニケーションは様々な用途に利用できるため、目的をきちんと区分しないと、ごった煮になってしまいます。
たとえば代表的な目的のカテゴリは以下の4つです。
- 主に顧客を対象としたマーケティング・販促
- 就職したい未来の従業員を対象とする採用
- ブランディング
- ユーザーサポート
これは、コミュニケーションの相手の行動文脈やニーズの性格が違うため、ひとつの「戦略」にまとめようとすると無理が生じ、抽象的すぎて役に立たないものになってしまいます。
STEP2:競争系と問題解決系に分ける
もう一つの区分として、取り組む課題が「競争」の性格をもっているのか「問題解決」の性格をもっているのかによって、アプローチが変わってきます。
競争系の場合はここでフレームワークのアンゾフの成長マトリックスやSTPを使うとよいでしょう。
ターゲットとしたセグメントの中で、どんなポジションを取ろうとしているか?ということが明確になると、「戦術」の選択をする上で参照可能なものになるでしょう。
問題解決系の場合は、分析系のフレームワークである3CやPESTを用いて問題の背景や進む方向の正しさを検証し、打開策や新規事業への展開を検討する段階で、5フォースや4Cで「戦術」が無駄なく無理なく実現できそうか確かめてみると良いでしょう。
戦略シナリオ例(BtoB企業の場合)
Hot Pepperは個人消費の生活圏にフォーカスした戦略シナリオなので、BtoBのビジネスには、当てはめにくいと思うかもしれません。しかし、業界のネットワークの関係性の中で事業が進んでいく性格が強いBtoBのビジネスでも、実は意外とそれらしくなります。
例えば、ユニークな技術で業界では地位を築いているものの、サポートにリソースが割かれてしまうため新規顧客を獲得できないことが成長のボトルネックとなっている企業があるとしましょう。この場合、下記のような形が考えられます。
「まず既存顧客のサポートに集中する。Webを使ってサポートのサービスレベルを上げ、顧客ロイヤリティの向上と電話サポートと営業対応のコスト削減を両立させる。浮いたコストは当社の製品を知らない未知の潜在顧客へのアプローチに集中投下する。具体的には顧客の課題解決をテーマとしたコンテンツで検索エンジンからの新規ユーザー獲得を実施し広告に頼らない認知獲得の手段を確立する。Webサポート部隊の体制を強化し、課題解決コンテンツは2件/月のペースで追加していく。ブランディングは3年後の50周年のタイミングに合わせることにして一旦見送り、採用は採用媒体に対するテコ入れに止める」
いかがでしょう?
既存顧客を優先しない「戦術」は実行段階では無理があり、新規の顧客を見つけるために有効な広告メディアが存在しない場合、広告や参照チャネルより検索エンジンのトラフィックを優先すべきです。
これは上記のSTEP1・STEP2を使って、問題を切り分け、分析に基づいて検討を進めていくとたどり着くシナリオです。
これはあくまでも例なので、どうかこのままコピペしないようにしてください(きっと御社の状況では役に立ちません)お手伝いが必要なら、どうぞお気軽にお声がけください。