ざっくりわかるホームページリニューアルの予算(後編)
予想外に書くことが多くなってしまったので、2回に分けました。(前回の記事はこちら)
今回は、リニューアルプロジェクトの中でも経験が無いと見通しが立てにくい「企画系」の項目について説明します。
企画系の項目とは
ひとことで「企画」といっても、業務の環境や業界などによって捉え方は人それぞれだと思います。
Webサイトの制作においても、「企画」の意味するところは幅広く、なんとなく「提案書を提出すること」をイメージしている方も多いかもしれません。
Webサイトの(特にコーポレートサイトの)リニューアルプロジェクトで企画系の仕事を大まかに分類すると、
・プロジェクト全体の企画
・システム化の企画
・コンテンツの企画
に分類できます。
それぞれが明確に制作会社と共通理解できていないと、プロジェクトを進める中でエラーが発生したり目的の成果物が得られない結果になってしまいます。
何を作るか決める(という仕事の費用)
企画系の仕事のうち、「何を作るか決める」という仕事を「要件定義」と呼びます。
コーポレートサイトの場合、オリエンテーションを受けて「何をしてほしいのか」「提案してほしい内容」が分かれば、必然的に何を作るかわかりそうなものですが、八百屋で「リンゴとトマトをください」というのとは違って、一筋縄ではいかないのが普通です。
そこで、提示された要求事項を分析して、
・機能の開発が必要なもの
・コンテンツの制作が必要なもの
に大別し、それぞれについてより具体的に「何を作るか」明確にしていきます。
このプロセスが「プロジェクト全体の企画」に相当する部分です。
多くの場合、Webディレクターや、プロジェクトマネージャーがこのパートの仕事を行います。
要求内容が明確かつ具体的であれば、それをドキュメントとしてまとめて、計画に落とし込む作業を行います。
一回のヒアリング~分析・ドキュメンテーション~確認という一連の作業で、300,000円~500,000円ぐらいの費用が妥当でしょう。
ただし、要求内容が多岐にわたっていたり、具体的でなければ複数回に分けたヒアリングが必要だったり、解決策の検討に時間がかかったりするので、この部分に相当な予算が必要になる場合もあります。
内容・規模にもよりますが、数百万円かかる場合もあります。
この費用を惜しんで、行き当たりばったりで開発・制作してしまうと、結果的に目的を達成できなかったり
オーバースペックなものを作ってしまって無駄に費用が肥大化したりします。
機能とコンテンツ
要求内容がWebシステムの機能(サーバ、データベース、アプリケーション)で解決するものであれば、「システム化企画」が必要になります。
要求内容を満たすために、新しいインフラが必要だったり新しいプログラムを開発する必要があったりする場合に、それを定義づけて行く作業がシステム化企画の仕事です。
たとえばパッケージソフトのCMSを導入しようとするときも、そのアプリケーションに実装されている機能と、要求内容がマッチしているか分析(フィット&ギャップ調査)することも、システム化企画の一つと言えます。
機能に関わる部分は、多くの場合システムエンジニアがヒアリングを行って、最適なソリューションを提案していくことになります。
一方、「分類整理ができていないページを、もっと体系的に作り直したい」とか、「自社のサービスや商品をもっと魅力的に伝えたい」という要求の場合、それはコンテンツの企画で解決の糸口を探していくことになります。
情報の分類整理は、インフォメーションアーキテクトと呼ばれる情報設計のアプローチが有効です。
コンテンツを体系的に整理して構造化したり、情報へのアクセスの経路となるリンクの文言(ラベルと呼びます)をユーザーに分かりやすく考えなおしたりする仕事が情報設計の仕事になります。
また、サービスや商品を魅力的に見せるには、「導入事例の紹介」や「用途提案」だったり、「ユーザーインタビュー」というコンテンツのプランを考えるのがコンテンツ企画になります。
そして、それぞれのコンテンツをデータベースで管理して、関連性の高いページでレコメンドとして表示したいというニーズがあれば、システムとコンテンツが連携して企画を考えて行く必要があります。
表現するには、具体的なコンテンツのアイデアが必要になります。
このパートの費用は要件によって幅が広く、一般化できないのですが、制作会社の見積もりや提案の中にこの仕事が含まれていなければ、その部分は自社で賄わなければならないか他に手配をしなければならないことになります。
原稿を自社で用意する
プロジェクト全体の予算を圧縮するために、コンテンツの原稿を社内で用意するケースがあります。
これによって、ライティングの費用は抑えられるのですが、ときどきコンテンツの企画が曖昧なまま、何を書いたらいいのか中途半端な状態で原稿が宙に浮いてしまうことがあります。
逆にコンテンツの企画がしっかりしていれば、自社のサービスや商品についての原稿は自分たちで書いたほうがピントがずれずにコストパフォーマンス良く制作できます。
社内に文章を書くのが得意な人がいない場合は、取材とライティングを発注してしまったほうが総合的なコストとクオリティのバランスが担保できると思います。
取材とライティングの費用は、概ね¥100,000~150,000/1取材・1000字前後の原稿という費用感になります。
アイデアとフィージビリティ
コンテンツの企画も、システムの企画もどちらも豊かな発想や、あるいは発想の転換によって素晴らしいアイデアが生まれることがあります。
ただし企画として成立するためには、フィージビリティ(実現可能性)がとても重要になります。
プロジェクト全体として、システムとコンテンツの企画をとりまとめ、フィージビリティの検討プロセスを挟むことで、最終的なプロジェクトの成果物に対する完成イメージを具体的にすることができます。
実際にはフィージビリティの中でも「運用ができるか」という点が重要になります。
機能が立派でも使いこなせなければ意味はありませんし、初期のコンテンツが豪華でも更新性やコンテンツを追加していくリソースが確保できないと、オウンドメディアとしての価値が長続きしません。
以上、コーポレートサイトリニューアルの予算について、ざっくりとわかるように解説してみました。
が、ちょっと長くなってしまったかと思います。
特に、今回の「企画系」については「大事だ」という思いが強く、詰め込んでしまいましたがこれでもまだ不十分だと思います。
もっと詳しく知りたいという方は、お気軽にお問合わせください。