リニューアルプロジェクトの失敗事例に学ぶ、目的を見誤らないためのヒント
かつてIT業界では、失敗に終わるプロジェクトが約7割にも及ぶと言われていたことがありました。
数字の真偽はさておき、Webサイトのリニューアルプロジェクトにおいても失敗事例には事欠きません。
- 予算や工数が大幅にオーバーしてしまった
- 何度もデザイン修正が発生し、工期が大幅に遅れた
- 公開後の目標としていた指標に全く届かない …etc
わたしたちにも苦い思い出は数多くありますが、振り返ってみるといずれもプロジェクトを立ち上げる段階で、目的や方向性を見誤っていたことが一因としてあるように思えます。
どうしてプロジェクトは失敗してしまうのか、2件の事例をもとに考察します。
事例1:手段が目的化してしまう
最初の事例は英会話スクールのリニューアルプロジェクトです。
入会者数の伸び悩みという課題がリニューアルの背景にあり、オリエンの際にはWebサイトからの資料請求数を増加させるための施策が求められていました。
ところがプロジェクト初回のキックオフミーティングにおいて「コミュニティサイトが作りたい」という要件にすり替わっており、コミュニティサイトを模したデザインイメージが提示されたのです。
提案した資料請求への誘導施策やフォームの機能改修は見送られ、コミュニティサイト構築へ予算・リソースとも注ぎ込まれることになりました。
公開当初は順調にユーザー数も増加し、サイトもそれなりの盛り上がりを見せたのですが、コミュニティサイトという性質上、新しく入会したいと考えているユーザー層をなかなか取り込むことができません。
また、資料請求フォームの改修が手付かずとなっていたため、入力〜確認画面における離脱率の高さという課題が改めて浮き彫りとなりました。
結局、資料請求は期待した数に届かず、コミュニティサイトが下火になったことも追い打ちとなって、およそ2年の運営を経てその役目を終えています。
後々聞いた話ですが、社内プレゼンを実施した際に役員の一人が気に入っていたライバルスクールのサイトを引き合いに「このスクールに負けないようなサイトを」と発言したことで、それがいつしかスローガンのようになったとのことです。
そして競合分析の中で、そのライバルスクールの差別化要因の一つとして当時流行していたコミュニティサイトの運営が挙げられており、その構築が目的化していきました。
プロジェクト本来の目的である「資料請求の増加」がいつの間にか傍に追いやられていたのです。
「流行っている」「ライバル他社が成功している」から導入したい、という心情はとても理解できるものですし、わたしたちも流行りの手法やソリューションを試してみたいという衝動に駆られることはよくあることです。
しかし、新しい手法やソリューションが次々に浮かんでは消えるWebの世界だからこそ、その目新しさや謳い文句に惑わされないこと、常にビジネス本来の目的を見据えてプロジェクトを進めることの重要性を再認識した次第です。
事例2:目についた現象を問題と見誤る
次は素材メーカーのリニューアルプロジェクトで、BtoB企業によく起こりがちな失敗事例です。
前回のリニューアルから4年ほど経過し、徐々にではあるがページビュー数も減少しているとのことでリニューアルでデザインを一新したいとの相談がありました。
そして提示されたRFP(提案依頼書)にはページビュー数と比例して会社全体の業績も下り坂となっている、と記述がありました。
ページビュー数と業績の因果関係は未知数でしたが、とりあえずリニューアルして効果を見たいとの意向で十分な調査・検証期間を確保することなく、ページビュー数の増加がそのままリニューアルの目的として据えられることになったのです。
SEO(内部対策)などの流入施策とあわせてデザインリニューアルを行い、1年経過したところでリニューアルの効果を測定することになりました。
結果、1年間でページビュー数は2割程度増加しましたが、残念ながら業績そのものが回復するには至りませんでした。
事業上の課題である業績悪化の直接的な原因はここ数年の円安による原価高騰であり、業界全体が少なからずその影響を受けていました。
そして営業的には大口既存顧客との継続的な取引がほとんどで、新規顧客開拓のノウハウも持ち合わせていませんでした。
そこで新規顧客獲得のツールとしてWebサイトに白羽の矢がたったのですが、そのために急遽編成したプロジェクトチームもWebに関する知識が乏しく、解りやすい指標としてページビュー数に着目せざるを得なかったのです。
このように、あたかも目的と相関関係があるように見える指標や、目についた現象を解決すべき問題として見誤ることもよくある失敗のひとつです。
ちなみにページビュー数が増えたのはナビゲーションを正しく整理したこと、そして何より複数商材をまとめて掲載していたページについて商材ごとにページを分けた(=ページ数が増えた)ことが要因であって、ユニークユーザー数やリピートユーザー数など、他に指標となり得る項目に見るべき変化はありませんでした。
ともあれ、その課題や指標が目的と相関関係にあるかを見定めることがプロジェクト成功のカギとなるでしょう。
まとめ:プロジェクトの目的と方向性を正しく見定める
目的が正しく定まりさえすれば成功するというほどプロジェクトの運営は簡単ではありません
しかし最初に向かう方向がはじめから異なっていたり、規模を見誤ってしまうと、プロジェクトの舵取りが難しくなります。
船や飛行機のように、向かう場所(目的)と方角(方向性)を正しく見定めた上で出発させるべきなのです。
Webサイトのリニューアルともなると比較的大きなプロジェクトになりますが、とはいえ予算もリソースも限りがあります。
その資産を無駄遣いしないよう、最短距離で目的へ到達させるためにもの入念な事前計画が不可欠です。
IMAGICAイメージワークスではリニューアルプロジェクトを成功へ導くべく、計画に先立って「基礎調査」の実施をおすすめしています。
意外と知られていない!?Webサイトリニューアルに向けた基礎調査のススメ
リニューアルの客観的な指標や目標と成り得る項目を洗い出すことが目的ですが、自社サイトの状況把握にも役立ちます。
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※本記事はいくつかの事例をもとに再構成、脚色しており、実在する企業・団体とは関係ありません。